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【レポート】INBOUND LABO 実践的なインバウンドマーケティング講座 第3回<飛騨高山に学ぶ地方創生とインバウンド> 

6/22(木)LEAGUE有楽町にて、INBOUND LABO第3回<飛騨高山に学ぶ地方創生とインバウンド>を開催。株式会社やまとごころとUDS株式会社の共催により、インバウンドトップランナーの講演・対談・交流会と双方向のディスカッションを交えた学びの場となりました。

今回はゲストに高山市役所企画部部長 田中明氏を迎え、インバウンドに湧く地域の先進事例としての高山市の取り組み、さらにはなかなか聞くことのできない今後の課題や方向性までも伺いました。

株式会社やまとごころ代表取締役 村山慶輔さんの主催者挨拶に続き、LEAGUEコーディネイターの児島絵里子から、UDS×やまとごころで今年10月に新宿にオープンするインバウンド事業者のためのコワーキングスペース「INBOUND LEAGUEのプロジェクトについて紹介。
INBOUND LEAGUEでは、インバウンドビジネスを通した連携で多様なメリットをうむ仕組みを目指しています。商品開発のためのワークショップ・テストマーケティングの場としての活用を企画しており、参加者からも高い関心が寄せらせました。

インバウンドがもたらすにぎわいと経済効果

人口89,000人の高山市には、昨年実績で年間46万人、実に人口の5倍もの外国人が訪れ滞在し、全国でも屈指のインバウンドに沸く地域として知られています。
430年前にできた街並みは、朝市、高山祭、ユネスコ無形文化遺産にも指定された屋台行事、さるぼぼ、など見どころはもちろんありますが、それでもアクセスは決して良いとは言えず、また山に囲まれ冬には大雪にも見舞われる地域です。そんな高山にどうしてこれだけの外国人が殺到しているのか。高齢化率3割のこの地域は、訪日外国人を積極的に受け入れることにより、にぎわいと大きな経済効果をうみだしました。
高山市役所で、インバウンド対策の最前線で活躍してきた企画部部長の田中明氏からその実績や秘訣を学びます。

30年のインバウンド取組の歴史と、国ごとの特徴を意識した発信

まず、人口の5倍もの外国人が訪れる高山では、アジアをはじめ、欧米やムスリム系など世界中からの旅行客が街を歩いていることが、市民にとって本当に日常の光景であるということ。
そんな光景を作り出すため、高山市ではインバウンドを呼び込む活動を30年前から続けてきました。「30年というと、どの自治体の人も『えっ!そんなに長い間かかるんですか?』と驚かれるのですが、ITや情報の発達した現代であれば真剣に取り組めば5年で成果は出てくると思います」と田中氏。

公式ホームページは11ヶ国語で展開。Facebookは「四季桜が咲きました」という投稿に、外国人を中心に25万リーチを記録するほど。観光パンフレットも、同様に多言語展開していますが、こだわりは「その国の人たちに響く内容を掲載する」ということ。例えば、自然の景色やアクティビティが人気のフランス人や韓国人に向けたパンフレットには「山」をメインに。一方、一年中暖かい地域に住むタイ人には、高山の美しい雪景色を前面に押し出した内容を発信します。
「自治体は、その地域のものなら何でもかんでも発信したいと思いがちですが、それを受ける側の視点を考えることが大切です。」

戦略的なwifi整備とビッグデータの活用

話題はマーケティングの観点からのwifi整備の話へ。
高山市では、無料wifiに登録すると7日間無料で利用ができます。高山市のすごいところは、それをただ通信環境の向上とするのではなく、ビックデータを取れる機会として戦略的に活用しているということ。登録サイトで登録したE-mailアドレス宛に、滞在中には観光情報や災害情報を送れるようにし、さらに帰国後にはそこから29項目もの詳しいアンケート調査を実施しています。
地道にしっかりとしたデータをとり、その貴重な情報を次のインバウンド施策に生かしていくのです。

民間との連携、広域地域との連携

児島と村山氏を交えた後半のトークセッションでは「連携」の話題へ。
「外国人にとっては、ピンポイントで高山市を目指してくるのではなく、必ずセットでそのエリアを訪れるという意識から、金沢や白川郷、松本など周辺の地域との広域連携が大事なんです。」と田中氏。
そして「とにかく実績を出すことにこだわる。そして実績を出していくには民間企業との連携が絶対に必要!
空港から離れた立地である高山市にとっては交通事業、特にバスや鉄道などの二次交通との連携はマスト。
また高山には広域のツアー提供が少なく、例えば「金沢〜松本〜高山」のエリアを巡るようなツアーが求められているといいます。先進をいく地域とはいえ、その先にはさらなる課題が。新たなビジネスチャンスを感じます。

市民の意識をどう引き上げるか

さらに田中さ氏が講座でもっとも繰り返し強調していたのは「市民の意識がキモである」ということ。
どんなに行政が働きかけたり、仕組みを作り外国人を連れてきたとしても、それを受け入れるのは高山市の市民。
言語や文化の壁、今までの伝統的な分野とは違う取り組みであるがゆえ「インバウンドは面倒くさい」と思われがち。
ただ、その地域の経済効果や活性、賑わいを作っていくために、それをやるかやらないか。
そうしたいと決めたなら、行政の人間が覚悟を決めて、市民とひざを突き合わせて話をして納得して取り組んでもらえるようにすることがまず初めの一歩であると、田中氏は自身の経験を踏まえながら語っていました。

会場からは、偶然数日前に高山市で開催されたマラソンに出場したという人から
「バスの一台一台に市長自らが乗り込んで挨拶に回っていた姿が印象的でした。」というエピソードが。
この30年、市のトップ自らが観光セールスマンとして動き続けている姿が、高山市の市民の心を動かしたのかもしれませんね。

貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
懇親会でも、参加者の方々からは民間の立場からの取組の提案が次々に挙がっていました。

■ゲストプロフィール
高山市役所 企画部 部長 田中明 氏
1961年岐阜県県高山市生まれ。大学を卒業後、都内商社に勤務し貿易を担当。昭和62年、高山市役所入所。16年間の国際交流担当を経た後、教育委員会、久々野支所次長、地域振興室長(課長級)、地域政策課長を務め、平成23年4月から6年間海外戦略部門の部長を務める。

【次回予告】
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INBOUND LABO 第4回<外国人インバウンド人材の活躍の秘訣> 
2020年の東京五輪を控え、年々増加する訪日客。国籍・習慣・宗教など客層が急速に多様化する中、いかに柔軟かつ日本らしいおもてなしができる人材を確保できるかが重要となっています。 そこで今回の勉強会には、多数メディアでも注目されている、外国人の人材育成に特化したNIPPONおもてなし専門学校の高山浩貴氏にご登壇いただきます。累計約600名のインバウンド人材を育成・輩出してきたからこそ分かる、おもてなし業界の最新事情、外国人登用の成功事例、今後の展望などを伝授いただきます。

2017年7月27日(木)18:30〜(受付開始18:15〜)
【受講料】 5,000円(交流会費込み)
【会場】  LEAGUE有楽町 東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館ビル6階
【お申込み】 http://www.yamatogokoro.jp/event/5507/(やまとごころHP)

【講師】
学校法人NIPPON ACADEMY NIPPONおもてなし専門学校 高山浩貴 氏
株式会社やまとごころ コンサルタント 木島英治