CONTACT
【インタビュー vol.2】株式会社ペントノート代表 山下紘雅さん
ALL/REPORT
2017.08.23
【インタビュー vol.2】株式会社ペントノート代表 山下紘雅さん


株式会社ペントノート代表 山下紘雅さん
早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。大手コンサルティングファームにて、組織・人事領域を中心とする経営コンサルティングに従事。退職後、1年間の世界一周旅行へ。帰国後、デジタルコンテンツの企画制作を行うスタートアップに参画。2015年、「ビジネスの世界に、もっと編集力を。」との思いから、株式会社ペントノートを設立。
■株式会社ペントノート http://www.pentonote.co.jp/

ー今日はよろしくお願いします!まずは、現在のお仕事の内容を教えてください。
ペントノートでは、「コンサルティング」×「クリエイティブ」という切り口から、ストーリーづくりやコンテンツ制作を通じて、コミュニケーションを取り巻くさまざまな課題の解決に取り組んでいます。

ー山下さんは独立される前から「コンサルティング」×「クリエイティブ」を手がけていたんですか?
新卒で入社したコンサルティングファームでは、主に組織・人事領域のコンサルティングワークに取り組んでいました。クライアントの組織や人材面での課題を洗い出して、組織変革やビジョン浸透のための取り組みを考えたり、人材育成体系や人事制度を設計したり。いわゆるクリエイティブとは無縁だったのですが、そういった仕事のなかで、パワーポイントで配布用の人事制度ハンドブックを見やすく作ったり、クレドやビジョンポスターをデザインしたりといったことまでやっていました。

ー元々クリエイティブの領域にも関心が高かったということですね?
ロジカルシンキングや仮説思考力など、いわゆる左脳を徹底的に鍛えて勝負するという意味では、コンサルティングの仕事は性に合っていたのですが、実際のビジネス経験がないなかで、クライアントの課題を「自分ごと」として捉えることがなかなかできずに、当時は苦しんでいました。それよりも、複雑な事象をものすごくシンプルに図示化できたときや、目の前のお客さまが自分の資料を見て喜んでくれたときの方が充実感を感じていましたね。いま振り返ってみると、ビジネスとしての影響力の大きさよりも、目の前の相手に「いいね!」と言ってもらえるアウトプットづくりに夢中になっていたんだなと思います。

ーそれで、川上から川下まで、考え方をつくるところから行動する人の手に渡るところまでやるという方向に進んだんですね。
クリエイティブのいいところは、もちろん作る過程も大事なのですが、最終的にできあがったものに対して、いいか悪いかがはっきり分かる、それも直感的に分かる点だと思います。いくら正しいと思える理屈を積み上げても、結果としてできあがったキャッチコピーやデザインがイケてなかったら、「あれはいったい何のための議論だったんだ」となりますよね。一方で、ビジネスの世界では、課題解決のための仮説を立ててクライアントを説得するプロセスは必須です。そこを示さずに「これがカッコいいんだ!」といくら言い張っても、誰も耳を傾けてくれません。そこで、コンサルティングとクリエイティブのアプローチを行き来しながらストーリーを練り、最終的なアウトプットまで作り上げてしまう。そこまでワンストップで実行して初めて、コミュニケーションに関わるクライアントの課題に寄り添えると思っています。

ー1人でコンサルとクリエイティブの両方は大変じゃないですか?
目の前の一つひとつの課題に無我夢中で取り組んでいるうちに、気がついたら会社を設立して両方やっていたというだけなので、やっぱり大変ですし、いわゆるビジネスモデルとしての筋は悪いかもしれません(笑)。ただ、さまざまなパートナーと一緒に仕事を進めていて、お客さまとも同じチームのような意識で取り組んでいるので、一人で仕事をしている感じはまったくないですね。今後は、自分と息の合うクリエイティブのパートナーを増やしていきたいと思っています。


[今までに手がけた事例の数々。パンフレットやパッケージなど多岐にわたる]

ー山下さんの仕事スタイルはどんな感じなんですか?
最近は、クライアントの課題を持ち帰って自分で解決策まで一気に考えてしまうのではなく、クライアントと一緒になって企画を考えていく、というスタイルが増えてきました。役員から「山下さんの仕事の仕方を若手社員に教えて欲しい」と言われることもあります。そういうときは、ディスカッションの時間をしっかり取って、あえてじっくり考えてもらうようにしています。そのなかで少しずつ課題を「自分ごと」に落とし込み、その人なりの気づきを感じてもらって、一緒にアウトプットの手前まで作っていきます。もちろん、編集、ライティング、デザインといった制作業務はこちらで担いますが…。先ほど、クリエイティブのいいところは結果がひと目で分かるところだと言いましたが、一方でクライアントワークという点では、お客さまが「これは自分たちで作った作品だ」と揺らぎなく思えていないと、それこそ「作って終わり」になってしまいます。逆説的ではあるのですが、自分がいまやっている仕事は、プロジェクトのプロセスにも重きを置いていて、いかにお客さまに一緒に考えてもらうかが大事になっています。コンサルタント時代もいまも共通するのは、「人」がキーになっている点ですね。

ーベースとなる「コンサルティング」×「クリエイティブ」に、さらに「人を育てる」という観点が重なって、個人としての山下さんの強みがそのまま仕事につながっている感じですよね。そこが一番、他との差別化というか、「ペントノートさんに仕事を頼みたい」という動機になっているんですね。今後目指す方向はありますか?
最近では「なんでも屋」になってしまっている気もするのですが(笑)、こうして幅広い領域でチャレンジができているのも、お客さまが自分の能力を見出してくれて、可能性をどんどん広げてくれているからなんですよね。「人を育てる」ということにしても、意図して目指していたわけではなく、結果としてそうなった、という感じです。でも、周囲から求められているのであれば、それは何かしらの形で「見える化」していきたいと思います。「ペントノートに頼むと、仕事のやり方も含めてこういう価値が得られる」というスタイルを確立して提供していきたいですね。自分はクリエイティブの専門から入っていないからこそ、既存のやり方にとらわれずにできる仕事があるのかもしれません。

ーそれって一番の究極のクライアントフォーカスのような感じがしますね。クライアントと同じ目線に立ってものづくりや課題解決をしていくという感じですね。
そうかもしれません。日頃から、クライアントと対峙するのではなく、目の前のお客さまに寄り添う「伴走者」になりたいと思っています。お客さまが走れば、自分も横で同じペースで走っていくというのが自分のアプローチの仕方かなと思います。だから、まったく同じ内容の仕事を受けたとしても、一緒に取り組む相手が変われば、アウトプットは当然違ったものになると思いますね。

ーとっても大変そうですが仕事として、素直にいいなあ!と思います。
ありがとうございます!もちろん大変な毎日ですし、週末も含めて四六時中悩んでいますが、好きなことを仕事にしているせいか、独立してから仕事が嫌だと思ったことは一度もないです。独立した人はみんなそうなのかもしれないですけど…。


[シンプルさを追求したペントノートのロゴ。作品の手触り感にもこだわりが]

ーそんな山下さんにとってLEAGUEという場所はどんな場所ですか?
一緒にランチへ行ったり、息抜きに話したりする仲間がいて、そして仕事仲間もできました。仕事とプライベートの両面から、自分の日中の居場所、心のよりどころという感じがありますね。最初は、ここまで仲間や広がりが生まれるとは想像もしていませんでした。

ーありがたい言葉です!仕事仲間というのは、具体的にいうと?
ライターさんやデザイナーさんで一緒に仕事をしている人もいるし、同じブースをシェアしているスタイリッシュ・アイデアの新井さんには、ワークショップの企画や講師をお願いすることもあります。他にも、リサーチや資料作成をお願いしたり、逆に企画の仕事の相談を受けたり、仕事のパートナーとしてご一緒している方々がたくさんいます。いろいろな役割のプロフェッショナルと一緒に仕事を進めることに慣れているという点で、企画や制作の仕事に携わる人たちとコワーキングスペースという「出会いの場所」の相性は、とてもいいと思います。

ーLEAGUEが今後どうなったら山下さんにとって、もっと嬉しい場所になるでしょうか?
せっかく多店舗展開していくなら、あえて有楽町や新宿にも行きたくなるような仕掛けが欲しいですね。例えば、最近はクライアントからインバウンド関連の相談を受けることも多いのですが、そういうときに、インバウンドに詳しい人たちが集う場所があるなら、そこには行きたいです。自分はインバウンドの専門家ではなく、あくまで情報整理やストーリーづくりをお願いされているので。さらにそこで出会った専門家をクライアントに紹介して、クリエイティブだけではない相談にも乗れたら、ビジネスとしての広がりも生まれますよね。自分の仕事は、極端に言うと誰とでも組めるんですよね。その中で、「ペントノート」というブランドがちゃんとあって、そこに共感してもらえる人たちと一緒に仕事をしていきたいです。クリエイティブの仕事は、直感的・感覚的な部分も多いので、そういった言語化できないアウトプットのイメージを事前に共有できないといけません。ただ、「世界観やイメージを共有できる人」といっても、そういう人を探すのが実は難しかったりするんです。仕事を依頼してくださるお客さまも同じで、できあがった成果物や事例を見て、「これはカッコいい、自分たちもこういうものが欲しい」というのは簡単なんです(笑)。だから、その人の想いの芯や核となる部分を探っていけるようにヒアリングを重ねます。

ー山下さんの軸、ここに価値を置いているというのを聞いて、そのような価値観も含めて人や情報を紹介していける仕組みをつくっていきたいですね。それはAIではできない仕事だと思うんです。山下さんの想いを汲み取れて表現できる、コーディネイターでありたいと思います。そのためには力をつけて、私達も成長していかなければいけないと思っています!
LEAGUEを訪れた人が、ここの空気感をどのように感じ取るかって、とても大事ですよね。最近、LEAGUEに来てくださるお客さまが増えたのですが、「ここに来ると何か新しいことが生まれそう」と言っていただけて、自分も嬉しいです。東銀座という立地も好評です。それぞれの場所に個性的なコンセプトがあって、会員になることが誇りとなるような場所であったらいいですね。



インタビュアー: LEAGUEコーディネイター児島絵里子